不易展 ギャラリー解説 2a

この部屋は講演会の時には椅子を入れ、皆様に座って頂いておりました。平日、ギャラリートークの時にはコンセプトをヴィジュアル化して見て頂く事に重きを置いております。低いテーブルを五台。それぞれにイメージを展示してあります。
まず一番最初は織楽の物創りに置いて非常に大切な和紙の素材感です。楮:三椏:雁皮と三種の和紙を重ねてあります。それぞれを触って頂くと、手に伝わる触感は全て異なります。自分が創り出す織物の根本がこのような違いを織分けることが出来るのか。帯といえば柄に目が行きがちですが、織楽にとってはそれをささえるベースの多様性が織り上がった帯の楽しさ、表現力、風合いの違いに繋がると考えております。また和紙の白さは普段私たちが使っている洋紙の白さとは異なります。真っ白ではなく素材の「素」という言葉が相応しいものです。写真などでは捉えきれない物が美しさの根底の大きな要因になっているように思います。
次は吉岡先生の御講演でも説明いたしました和紙染の椿です。余計なことをしなくてもそのままで美しいものです。こねくり回すようなことではなく、余分なものを取り除いていくとそこには「素」の美しさが残るような気がします。
最後に藤田嗣治が使っていたキャンパスを再現したものです。写真ではわかりにくいのですが、サイドには麻の生地目が見えます。通常のキャンバスと同じように麻の生地をベースにしてあるのですがその上の仕事が違いすぎます。この藤田の乳白色のキャンパスは長らく秘密とされていました。今年、昔に撮影された土門拳のアトリエの写真から秘密が判明しました。ベースは硫酸バリウム(胃の検査で飲むバリウム)に炭酸カルシウム(日本人形の胡粉と同じ成分ですが、貝から取る物を胡粉と呼びます)に鉛白を合わせて絵の具として塗っていたとされます。その上にベビーパウダー(昭和30年代の子供の時期にはポンポンと呼んでいました。)を使ったそうです。このキャンパスの表面を見てさわると日本人形のようななめらかなつるっとした非常に艶めかしい手触りです。この表面があるからこそ、面相筆を使い藤田はあの美しい女性を描くことが出来たのです。ですからこの表面なしではあの線、表情はあり得ないのです。
このようにここでは「素」というもののもつ必然が私の帯創りに大きくかかわっています。