開白

ここ十数年、物創りの指針である谷崎潤一郎が語る陰翳礼讃の世界。光と闇があやなす陰翳の微妙な濃淡を、無限の色彩と捉え、漆黒のなかに、余情と創造を見る。それは私にとって織物創りの本質を見つめなおす大きなきっかけとなりました。
日本には古より数多くの裂が今もなお、大切に残されています。一寸四方(約四㎝弱)の裂でも大切に残し、そのなかに広がる宇宙を見てきました。
小さなディテールのなかにも、極めて強靭な意志が存在します。織物はその汎用性ゆえに創り手の意思とは異なり布から様々な形に姿を変え使われてきました。私達が帯と思っている織物も三一㎝巾の約五m弱の織物に過ぎません。
着物を着るときに初めて帯として機能するのです。帯である以前に織物としての魅力を持っているのか。またそれを感じて貰う場を業界外に求め、ギャラリーマロニエにて展覧会「開白」を開催いたしました。
そこではITFで発表して以来の新しい立体作品も制作しております。あわせて写真家 亀村俊二氏に撮影して頂いた作品集「開白」では、写し出された織物も形を変え、普段とは異なった表情を見せています。自分の織物が、どのような形であれ、大きさであれ、そのなかに美しさを保ち、ここにある存在をしめす。
いつもそのような織物でありたいと願っております。闇は無明。混沌とした状況のなか、決して終焉ではなく、開白を申し述べることにより。闇は闇でなくなりすべてが始まります。自分自身はここにおり、新たなる一歩を踏み出そうとする思いをこの開白に重ね、申し述べさせていただきます。